過払い関係判例と解説

悪意の受益者について平成23年12月1日の最高裁判所判例
平成23年12月1日、最高裁判所で悪意の受益者を巡る重要な判例が出ました。
以下、内容を簡単に解説します。
まず、貸金業者は利息制限法の上限金利を越えて利息を受け取っていた場合、悪意の受益者と推定されます。その場合、過払い金に利子を付けて返さないといけません。「過払い金を返さないといけないと知っていたのに返さなかった」ことを、民法の用語で悪意というわけです。

悪意の推定を覆すためには、当時、みなし弁済が成立すると信じていたことがやむを得なかったことを立証しないといけません。その立証がなされると、過払い金に利子を付けなくてよいことになります。

そのためには、当時みなし弁済の必要条件として求められていた貸金業法17条、18条の書面を交付していたか、少なくとも要件を満たす書類を交付していると当時考えてもやむを得なかったことが求められるわけですが、返済期間、返済金額については記載が必要か争いがありました。

つまり、リボルビングの場合、返し方によって変わるから書いていなくても適法な書面の交付だと考えていたとしてもやむを得ないのではないか、という主張があったわけです。

それを退けたのがこの判決。

リボ払いの場合は、個々の貸付けの時点での残元利金について最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載を記載することが必要であって、それをしてなかった以上、みなし弁済の成立を信じたことがやむを得なかったとはいえない、したがって、悪意の受益者である、ということ。

つまりは、悪意の受益者の推定を覆すための要件を厳格に解したということです。

これによって、今後、過払い金については、法律的には利息を請求できることがはっきりするケースが大部分になると思います。過払い金に利息を付けて返してもらえるわけですから、過払い金を請求する人にとっては、有利な判例だと言えます。

これにより、多くの場合には、法的には、過払い金に年5%の利息を付けて返してもらえることが明らかになったといえます。

クラヴィス・プロミス切り替えの場合についての判例
最高裁判所で、旧クオークローン(現クラヴィス)からプロミスに切り替えがなされたケースについて、一連での充当計算を認める判決が出ました。切り替えの案件において、旧クオークローンの当事者としての地位をプロミスが受け継いだと判断されたわけです。この結果、類似のケースにおいては、旧クオークローンに対する過払い金をプロミスに請求できることが判例上明確になったといえます。

この判例は、業者側の勧めで旧クオークローンからプロミスに取引先が変更になった場合に、過払い債権者がプロミスへの請求が可能になるという形で救済される道を開いたという意義があるといえます。(従来、その点がはっきりせず、しかしクラヴィスは過払い金をほとんど返済することができない経営状況にある(少なくともそのように主張して返してこない)ため、旧クオーク分の過払い金が返還してもらえないという問題がありました。それが、今回の判決で、プロミスに請求できることが明らかになり、過払い債権者(元債務者)が充分に過払い金を返してもらう道が開けたと考えられます。

悪意の受益者についての判例
「期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決以前に 貸金業者が同特約の下で制限超過部分を受領したことのみを理由に,当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益者」と 推定することはできない」(最高裁判例集より)

この判決は、過払い請求をしようとしている人にとって、あまりよい判決ではありません。ただし、過払い金の元本を返還請求するのに影響はありませんし、利息請求に関しても契約の際に交付された書面や、返済の際に交付された書面など、他の要件によります。
以前は過払い金には利息を付けて返還するよう求めるのが一般的でしたが、この判決で、ある時点以前の分に関しては、契約や返済の際の説明文書等次第では、利息の請求が難しくなったということです。もっとも、業者側が悪意の受益者であると推定されることには変わりがないので、立証責任を考えると、過払い債権者有利の状況に変わりはないともいえます。

少し解説すると、民法704条は受益者が悪意の場合には、利息を付けて返還しないといけないと定めています。
悪意というのは、このケースでいえば、業者が違法利息を受け取っていた場合に、業者自身がそれを不当なもの(法律上原因がないもの)と認識していたことを言います。
今回の判決は、*ある時点以前においては、一定の要件を満たした場合みなし弁済として有効だという考えを業者が持っていたのはやむを得ないから、利息は請求できない場合がある、という趣旨といえます。

ただ、あくまで、「受け取っていたというだけでは悪意と推定できない」というだけであって、みなし弁済が成立していると業者が考えてもやむを得なかったといえるためには、懈怠約款以外の点においてみなし弁済の条件が整っていたこと可、少なくとも業者がそう考えてもやむを得ないと解される状況であったことが必要になると考えられます。

それゆえ、今回の法理がすべてのケースにおいて債務者(過払い債権者)に不利に働くものではありません。

*最高裁がみなし弁済に厳しい要件を課すことを判示した平成18年1月13日。

→この判例の後、平成23年12月1日に過払い債権者側に有利な判例が出ました。それゆえ、この判例の影響は現在では、限定的であるといえます。ただし、ケースによっては、なお問題となり得ます。

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