長時間残業による病気には労災の他慰謝料も認められ得ます。
長時間の残業を規制する法律は不十分なものです。すなわち、36協定(労働基準法36条に基づく協定)が結ばれると、長時間の残業でもそれ自体はいちおう適法と考えられています。もっとも、残業時間については厚生労働大臣告示という形で規制はありますが、これを超えた場合、労基署による指導の対象にはなるものの、ただちに民事上違法の効果が生じるものではないと解釈されています。
しかし、長時間残業が原因で病気になったりけがをした場合は、会社には民事上の責任が認められ得ます。
すなわち、企業経営者には、安全配慮義務があります。安全配慮義務とは、雇用主と労働者のように、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきも」(最高裁昭和50年2月25日判決)として、判例で確立された法理です。
具体的には、経営者は労働者が病気になったりけがをしたりしないように、職場環境を整え、労働時間等に配慮し、その他、労働者の生命・健康を守るために必要な配慮をすることが求められます。
長時間の残業により、うつやその他の病気になった場合は、経営者は安全配慮義務を果たしていなかったということになり、債務不履行責任が発生し、損害賠償責任が認められます。
債務不履行という言葉は少しわかりにくいかもしれませんが、簡単にいえば、経営者・企業として負っている義務を果たさなかったことだと言えるでしょう。いわゆる不法行為とは少し違いますが、損害賠償を求めることができるという点では同じです。
この際、精神的損害に対する損害賠償も認められるので、事実上、慰謝料等と考えてよいでしょう。他に治療費、逸失利益の補償(働けなくて本来得られる給料を得られなかったので代わりに払ってもらうこと)などの請求が認められ得ます。
なお、ここで重要なのは、因果関係の証明です。損害賠償は、原因と結果のつながりがないと認められないからです。
すなわち、医師の診断書などによって、因果関係を証明することが重要になってきます。





