時効援用をご依頼頂いた場合の流れ
1.時効援用とは
時効援用とは、すでに時効期間が過ぎている債務について、時効の効果を確定的に発生させるための意思表示を言います。すなわち、時効は期間が経過しただけでは確定せず、時効を援用するという意思表示を債権者に対して行うことで、初めて確定します。
一定の要件を満たす場合には、この仕組みを用いることで、消費者金融やカード会社等からの借り入れやカード利用残高などの債務を支払わなくてよくなります。時効には、取得時効と消滅時効がありますが、ここでは消滅時効が問題となります。すなわち、消滅時効の成立に必要な期間が過ぎて、その間に時効更新(改正前民法では、中断)事由がなく、かつ、債務者が時効を援用すると、債務を支払わなくてよくなります。
2.時効援用をご依頼頂く場合
時効援用を当事務所にご依頼頂いた場合、以下のような流れになります。
1)相談、依頼
まず、お電話か電子メールでご予約いただき、事務所までご来訪の上、弁護士にご相談ください。令和7年6月現在、多摩中央法律事務所は立川にあります。ご相談の上、時効援用を依頼したいという場合は、委任状や契約書等に署名、押印いただく等、委任契約作業を行います。
なお、ご相談の際には、もし、お手元に資料がある場合は、お持ちください。例えば、債権者(カード会社、消費者金融、債権回収会社など)からの請求書や、裁判所からの支払督促や訴状など、請求についてわかる資料がある場合は、お持ちください。特に裁判所から訴状や支払督促が来ている場合は至急対応が必要なので、必ずご持参ください。
一方、あるカード会社や消費者金融から借りた記憶があるが放置したままになっている、以前に請求書が来た記憶があるが今は手元にない、というような場合は資料はなくても、まずはご相談ください。
また、信用情報の写しを持ってきてくださる方もいます。これも債権を特定するための手掛かりになります。ただ、信用情報から消えていても債権譲渡などで債権回収会社に債権が移っていて請求が来るケースもあるので要注意です。それゆえ、信用情報に載っていなくても、借り入れやカード利用をして支払わないままになっている記憶にある場合は、以下のように調査をしたほうが良いので、ご相談の際の一覧表にはご記載をお願いします。
2)受任以後、時効成立の有無の確認まで
a)債権を特定できる資料がある場合
請求書など債権を特定できる書類がある場合(下記c)の場合を除く)、債権者に対して時効援用の内容証明郵便を送ります。債権者側からしばらく経っても反応がなければ、弁護士から債権者側に電話で時効で問題ないか、確認をします。内容証明を送ってすぐだと債権者側もまだ時効中断(更新)事由の有無の調査が終わっていないことがあるので、1か月程度経ってから電話で確認することが多いです。時効で問題がないということであれば、その旨をご依頼者様に郵便等で連絡して、費用の過不足があれば清算し、終了です。
b)資料がない場合
債権を特定する資料がない場合は、まず、受任通知を送ります。そうすると、しばらくすると債権者側から取引履歴が開示され、最終弁済日などの情報がわかるので、それで時効成立に必要な期間が経過していることが確認出来たら、内容証明郵便で時効を送ります。その後は上記a)と同じです。
c)裁判所から訴状や支払督促が来ている場合
裁判所から訴状が来ている場合は、答弁書で時効援用を行います。時効が成立している場合は、たいていは、訴訟は原告(債権者側)により取り下げられますので、その後、念のため電話で直接債権者に時効の確認をし、問題がなければ、業務終了です。もちろん、依頼者の方への報告と清算は同様に行います。
一方、支払督促の場合は裁判所に督促異議を出しつつ、債権者側には内容証明郵便で時効援用通知を送ります。支払督促に対する異議は裁判所にだけ送るもので、それだけだと相手方に対する援用として効果があるのか疑問なので、念のため相手方には内容証明郵便を送るようにしています。
この場合も債権者側が時効成立を認める場合は、支払督促を取り下げてくることが多いです。その場合も、念のため電話で時効で問題ないかの確認をするようにしています。
以上は、時効の成立について債権者側に争われなかった場合です。これに対して、債権者側が時効の中断(更新)の主張などで時効成立を争う場合については、以下の3をご覧ください。
3.債権者が時効成立を争うケース
債権者が時効の成立を争うケースもあります。すでに訴訟をされていて判決確定から10年は経過していない、という場合や、時効期間経過前に裁判所に支払督促を申し立てられていて確定して10年は経過していない場合、は時効中断(更新)がされていると考えられ、この場合は基本的に時効ではないことは認めざるを得ず、そうすると、分割で支払うのか、それとも民事再生や自己破産をするのか、などを検討しないといけないことになります。債務者のほうでは訴訟等をされた記憶はなくても実は転居したときにしばらく住所変更をしていなくて前の住所に訴状が送られて最終的に公示送達で判決が出ていたり、裁判所からの書類を家族が受け取って放置していたり、などで判決や仮執行宣言付き支払督促など債務名義をとられていたというケースは珍しくはないです。
一方、債務者が電話で支払いの約束をした記録がある、などの反論をされた場合は、事実関係についての検討が必要となります。また、時効期間経過後に支払督促を申し立てられて確定した場合も、支払督促には既判力がないので争える(時効期間経過後に申し立てられた支払督促が確定していても債務者側は時効成立を主張できる)という説も有力です(時効期間経過前だと時効が中断(更新)されてしまいます)が、それでも債権者側は時効成立を認めないと主張してくることもあります。このように債権者側と債務者側で見解が対立した場合には、あくまで時効成立を主張するのか、それとも何らかの妥協がやむを得ないのか、個々に検討する必要があります。ただ、債権者側も決め手がない場合は、そのまま時間が経ち、結局債権者側の主張でも時効が成立する時まで動きがないこともあります。
もっとも、時効の成立について、争点があるままという案件は少なく、時効の成立が認められる案件が多いです。もっとも、実は判決や時効期間経過前に申し立てられた支払督促の確定から10年以内であることがわかり時効ではないことを認めざるを得なくなったケースは比較的あります。その場合も、そのまま任意整理や、民事再生、自己破産などをご依頼頂くことが可能です。
4.時効援用の弁護士費用について
時効援用の場合は、1社目は3万円(税込3万3000円)、2社目以降は1社ごとに1万円(税込1万1000円)を追加とさせていただいております。また、それ以外に内容証明郵便送付代などの実費がかかります。
*なお、時効が認められずに任意整理、民事再生、自己破産等に移行した場合は報酬体系が異なる点については、ご了承ください。
5.時効援用については弁護士にご相談を
時効援用は上記のように、簡単に見えても実は法的論点もあり、問題が生じることもあります。それゆえ、時効援用については、ぜひ、弁護士にご相談ください。当事務所では、時効援用についても、相談だけなら無料です。ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪をお願いします。