給与所得者等再生とは?
給与所得者等再生は個人向けの民事再生のひとつであり、小規模個人再生と並んで、個人の方が生活を再建するために利用する民事再生手続きです。小規模個人再生と異なり、債権者の不同意の意見により不許可になるという仕組みがないのがメリットです。すなわち、要件を満たせば、債権者の意向に関わりなく認められうるということになります。それゆえ、特に、小規模個人再生だと半数以上の債権者または過半数の債権額の不同意意見が出て認可が下りない可能性が高いと思われる場合にあらかじめそれを回避するために給与所得者等再生を選択する場合があります。
不同意の意見を出す債権者は一般に多くはないのですが、特定の債権者が債権額で過半数あるような場合にはその債権者が不同意の意見を出すだけで過半数の不同意があったということになり不許可になってしまう恐れがあります。そのような場合には、リスク回避という意味で給与所得者等再生を選ぶ場合があります。
ただし、手続き利用の要件の問題として、原則としてサラリーマンや公務員などの給与所得者しか利用できないこと、給与所得者であっても収入の変動が大きいと認められない可能性があること(過去2年間の変動が2割程度が限界だといわれていますが、明確にはいえないところです)、から、利用が難しいケースもあります。
また、手続きの条件・効果に関しても小規模個人再生と異なる点があります。すなわち、再生計画案を作成するに当たって、小規模個人再生の場合に求められる最低弁済額の基準及び清算価値基準の他に、可処分所得基準(再生計画案における計画弁済額は可処分所得2年分を下回ることはできないとする基準)も満たす必要があるため、案件によっては、小規模個人再生の場合より弁済額が多くなってしまう(あまり減額できない)こともあります。
なお、ここで、可処分所得は収入から必要な生活費を引いた金額のことをいいますが、必要な生活費の額は計算方法が決まっており、都市部だとやや多く、また、扶養家族の数が多いと認められる生活費は多くなります。それゆえ、扶養家族が少なく収入は多い場合は、可処分所得が高めになりがちです。
このように、給与所得者等再生には債権者による不同意の意見で再生計画案が不許可になるという仕組みがないというメリットがある一方、再生計画案による返済総額の下限が比較的高くなることがあります。それゆえ、小規模個人再生と給与所得者等再生、どちらがよいかは、ケースにより異なるということになります。なお、可処分所得の計算には、直近2年分の源泉徴収票と課税・非課税証明書が必要となります。
ご自身のケースについて小規模個人再生と給与所得者等再生、いずれが良いか、等については、ご相談の際に必要に応じて説明させていただきます。民事再生について検討しておられる方は、まずは、民事再生に詳しい弁護士にご相談ください。もちろん、当事務所でも給与所得者等再生の案件を扱った経験は豊富にあります。