民法改正が過払い金の消滅時効に与える影響

過払い金の消滅時効とは?

過払い金は不当利得返還請求権という債権です。つまり、消費者金融やカード会社に過払い金を返還するように求める権利です。そして、債権には消滅時効があります。消滅時効の期間が経過すると、債権の内容を実現するように相手方に求めても、時効を援用されてしまうともう請求できません。貸金業者は当然時効についての知識はあるので、時効期間経過後に請求しても時効を援用されてしまうことはほとんど確実でしょう。したがって、過払い金は消滅時効にかかる前に請求する必要があります。

なお、時効は催告により6か月伸び、訴訟をすれば中断(改正法では更新)し、判決が出て確定した時点で再度期間が最初に戻って起算する(数え始める)ことになります。それゆえ、過払い金が時効になりそうだったら、時効になる前に内容証明郵便等で期限を6か月伸ばす、裁判をして時効にならないようにする、という方法があったわけです。郵便を送ったものの何らかの理由で届かないような事態を考えると、時効が迫っている場合には時効完成前に訴訟をする方が確実でしょう。

従来の過払い金の消滅時効

民法改正前、過払い金が消滅時効にかかるまでの期間は10年間でした。今でも、改正民法施行日である令和2年(2020年)4月1日より前の過払い金については時効は10年のままとなります。

そして、基本は最終弁済日から数えます。つまり、基本的には、完済から10年以内に請求すればよかったわけです。ただ、これについては、状況により、個別の返済日から数えるべきとの主張がされる場合もあり、また取引の分断などの論点もありますので、基本的に、早めの請求が望ましいと思います。特に、取引の分断があると最終弁済から10年以内でも過払い金が出ている古い時期の取引はすでに時効で、分断後の部分は適法利率で過払い金が発生していない、というようなケースは珍しくないので、最終弁済日から10年は大丈夫というわけではないことに注意が必要です。

改正民法施行後

さて、令和2年(2020年)4月1日に施行された改正民法では消滅時効についても改正がされており、以下の通り定められました。

第百六十六条

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

一般に、上記の1号の起算点を時効の主観的起算点、2号の起算点を時効の客観的起算点と呼んでいます。並べて書かれていることからわかるように、いずれかを満たすと消滅時効にかかってしまいます。2号は従来からあった要件ですので、新たに問題となるのは1号です。ここで、何をもって「権利を行使できることを知った」といえるかは、今後判例において明らかにされていくと思いますので、現時点では明確ではないです。例えば、カード会社に自分で連絡して過払い金の返還を請求したが応じてもらえなかった、という場合には遅くとも実際に請求した時点で上記の1号に当てはまるでしょうが、取引履歴を請求しただけの場合に権利を行使できることを知ったとして1号の定める起算点に該当してしまうのかは、今のところわかりません。

このように不明確なところがあるので、特に改正民法適用事案においては、一般に、過払い金は、念のため、早めに請求することが望ましいといえるでしょう。

経過措置

 改正前に生じた債権については旧法が適用されます。したがって、令和2年(2020年)3月までに完済した過払い金については、従来通り完済から10年で時効となることになります。(ただし、分断の論点等には注意)

 一方、取引を続けていて令和2年(2020年)4月以後に初めて過払いになった場合は、改正法適用となります。従来の完済から10年ということの他、返還請求ができることを知ってから5年という期限できて、いずれか早いほうで時効となってしまいます。

 また、改正の前から過払い金が発生していて、改正後も返済を続けて過払い金がさらに発生した場合は、改正前に発生した過払い金については旧法適用、改正後に発生した過払い金については改正法適用となると考えられます。ただ、今(令和6年4月)の時点ではまだ改正法適用で時効が主張される時期になっておらず、裁判所の見解が明らかでないため、完済が改正後ということで全体に改正法適用の可能性もないとはいえず、注意が必要だと思います。

まとめ

これまでは、過払い金の時効は10年という考えがあったので、まだまだ請求しなくてよいと思ってそのままにしていたというケースもあると思います。しかし、改正民法適用の事案だとある時点から5年の経過で時効とされてしまうこともありうるので、過払い金が気になる方は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

ただ、166条1項1号の起算点に当てはまる事実がなければ、従来通り完済から10年が原則ですので、そういう意味では、改正後の民法適用のケースでも完済から5年が経過したとしても10年経過前であれば請求できるケースも多いと思うので、まずは弁護士にご相談ください。

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