過払い金請求で分断計算の論点が重要である理由

1.過払い金の時効はいつから数えるか?

過払い金は10年で時効になるという話を聞いた方も多いと思います。たしかに、(改正前民法の適用になる事案では)過払い金の返還請求に関して、消滅時効が成立する期間は10年なのですが、では、いつから数えて10年なのかが問題となります。ここで、原則は完済から10年とするのが最高裁判例の立場です。それに従えば、例えば、1990年に借り始めて、2018年に完済したなら、2028年に時効が到来します。(年単位ではなく、日を単位に見ますので、この例では2018年のある日に完済したとして、2028年の同月日に時効が完成します)

では、この2018年に完済したなら、2028年の同月日までに過払い金返還請求をすれば大丈夫なのでしょうか? 実は、必ずしもそうは言えない、というのが今回の話です。

2.取引の分断とは?

ある金融会社から借り入れをして完済するまで、通して一つの取引と考えれば、取引が終わってから10年で時効ということになり、一番最初まで遡って過払い金の計算をすることができることとなります。これを一連計算といいます。上記の例でいうと、2028年の該当する月日までに請求すれば1990年まで遡って過払い金の請求ができるということになります。

一方、途中で一度完済して、しばらく間が空いてから再度借りた場合はどうなるでしょうか? 例えば、1990年に借り入れを初めて、2015年に一度完済し、2016年に借り入れを再開して2018年に完済していたとします。

この場合に、途中の完済の前後で別々の取引と考えたらどうなるでしょうか? その場合は、途中完済の前の取引で発生した過払い金は途中完済から10年で時効になってしまいます。上記のケースだと2015年までの取引の過払い金は2025年に時効になってしまいます。

もっとも、途中でいったん完済していれば必ず分断計算になるわけではありません。基本契約が同一であれば、一連計算が認められることも多いです。ただ、カードをいったん返却するなど取引をやめる意思が読み取れる行動をしている場合には分断と判断される方向になりがちです。また、空白期間が長いことも不利に働く恐れがあります。それ以外に、まとまった金額を支払って(途中)完済とした場合にも取引打ち切りの意図があったと推測されて分断計算と認定される方向に働く恐れもあります。その他いくつかの要素が分断の理由として主張されることがあります。

一方、基本契約が別の場合には原則は分断計算ですが、前後の契約の条件、空白期間の前の取引の期間と空白期間の長さの比較、取引再開の経緯、などによっては一連計算で通る可能性もあります。

いずれにしても、過払い金を返還請求する側にとってはほとんどの場合一連計算のほうが有利なので、請求する側としては一連計算が認められるべきと主張していくことになります。交渉で妥協に至らない場合は訴訟にして、最終的には裁判所に判断してもらうことになります。ただ、裁判中に和解に至る場合も珍しくありません。その場合、裁判所の考え方を聞いてからそれに沿った線で和解に至る場合もあります。

3.分断計算の論点が重要である理由

一連か分断か、は過払い金返還請求において非常に重要です。特に、近年はそのようにいえるでしょう。なぜなら、分断計算とされてしまうと過払い金がゼロという場合も珍しくないからです。すなわち、「空白期間の前半の取引では過払い金があるものの、後半の期間については最初から適法利率で過払い金がない」という場合も多いのです。これは、2006年の最高裁判決や2010年6月施行の貸金業法改正との関係で、2007年頃より多くの貸金業者が新規契約の利率を適法利率の範囲内まで下げ、継続している契約についてもその際に、あるいはその後に利率を下げているケースが多いからです。そうすると、空白期間がある場合において後半の取引では最初から適法利率ということも良くあります。そうすると、前半の取引による過払い金が時効になる前、すなわち、前半の取引の完済から10年たつ前に過払い金返還請求をしないと後半分はもともと過払いがないために、もはや返してもらえる過払い金はないということになってしまいます。

これも、過払い金返還請求は急いだほうが良い理由です。

上記の例でいうと、1990年~2015年の取引と2016年~2018年の取引に分かれているとして、前半の取引ではグレーゾーン金利の時期があり過払い金が出るとしても、後半の取引はこの時期だと適法利率に下げられていることが多いでしょう。そうすると、この場合に分断計算とされて2025年に前半の取引による過払い金が時効になってしまうと、後半の取引には過払い金がないのだから、結局過払い金の回収はできないことになってしまいます。もっとも、一連計算が認められれば1990年~2018年の取引全体について、2028年に時効になるということになるので、2024年の現在からみればまだ少し余裕があることになります。しかし、一連か分断かは様々な要素にしたがって決定されるので、分断計算になることを想定して前半取引から10年たたないうちに請求することが望ましいと言えます。

4.空白期間がなくても分断計算とされる場合

途中で取引がない期間がなくても、いったん完済して同日に別の契約をして借り入れをしている場合に分断計算とされる場合もあります。例えば、借り換え前の取引が無担保ローンで借り換え後が不動産担保ローンである場合に分断計算とされた判例があります。もっとも、いずれも借り入れと返済を繰り返すリボルビング方式の取引であった場合に一連計算を認めた下級審判例もあり、一概には言えません。

ただ、空白期間がないからと言って安心はできないので、やはり、早めの請求が望ましいと言えるでしょう。

5.過払い金についてはまずはご相談を

上記のように、取引の分断の論点もあるので、必ずしも完済から10年は大丈夫とは言えません。その他にも、貸付停止による時効の個別進行の問題、1回払い取引の場合の問題、等もあり、完済から10年は時効にならないとは言い切れないのが現状です。それゆえ、過払い金については、10年ぎりぎりまで待つのではなく、早めに弁護士に相談したほうが良いと思います。

当事務所はこれまで多くの過払い金請求案件を扱ってきました。一連か分断か、が問題となる案件も多く経験してきています。過払い金のことでお悩みの方は、ぜひ、ご相談ください。お電話か電子メールでご予約の上、立川にある事務所までご来訪をお願いします。平日夜や日曜日の相談も受け付けていますので、平日昼間はお忙しい方も、ぜひ、ご相談ください。

当事務所では、過払い金については相談だけなら無料、ご依頼の場合も完済後のご依頼の場合は着手金はかかりません。もちろん、取引中でもご相談、ご依頼可能です。

また、過払い金返還請求をするに際して、特にお手元に資料が残っていなくても問題ありません。なぜなら、弁護士が消費者金融やカード会社から取引履歴を取り寄せて計算することができるからです(ほとんどのケースで取引履歴は開示されます。特に古い時期からの取引の場合は初期の部分が残っていないことはありますが)。

過払い金が気になる方は、ぜひ、お早めにご相談ください。

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