破産手続きで保険の解約返戻金がわかる書類を求められる理由

1.解約返戻金額がわかる書類が必要

破産手続きを行う場合、契約している保険について、解約返戻金の額がわかる書類が必要です。それを申立ての際に裁判所に提出する必要があります。実際に解約する必要はなく、あくまで、今解約すればいくら返戻金が戻るかという仮定の計算に基づく数値を出すことになります。また、口頭だと正確性に欠ける場合があるので、基本的に書面が必要です。契約している保険会社に連絡すると郵送してもらえると思います。一部の保険会社では、窓口への来訪が必要かもしれません。いずれにせよ、解約返戻金がある場合、ある特定の日の時点での解約返戻金の額を記載した書類をもらえると思います。また、解約返戻金がない場合、そのことを記した書類が必要です。これもお手元になければ保険会社から取り寄せる必要があります。

2.そもそも、解約返戻金とは何か?

解約返戻金という言葉を聞きなれない方もおられると思います。解約返戻金というのは保険と途中で解約した場合に契約者に戻されるお金のことです。保険によって、解約返戻金があるものとないものがあります。一般に生命保険や学資保険には返戻金があることが多く、火災保険や自動車保険には返戻金がないか、あっても少額であることが多いですが、約款・契約によって決まるものなので、一概には言えません。

3.破産手続きで解約返戻金の額を示す書類が必要な理由

では、破産手続きにおいて、なぜ解約返戻金の額を示す書類が必要なのでしょうか? これは、簡単に言うと、解約返戻金のある保険は財産性があるからです。すなわち、解約すればお金が戻るのですから、資産の一種だと考えられるわけです。破産手続きは資産を換価して債権者に配当することを原則とする手続きなので、保険が解約返戻金を伴うものであれば、原則として、財産として換価の対象になると考えられるからです。

4.解約返戻金がある保険は解約されてしまうのか?

では、解約返戻金の額がわかる書類が集まったとして、返戻金があれば保険は解約されてしまうのでしょうか? これは、場合によります。

1.解約返戻金が20万円未満の場合

解約返戻金の合計が20万円未満の場合、自由財産とされるので、換価されることはなく、したがって、管財人により解約されてしまうこともありません。

なお、複数の保険がある場合、すべてを合計した金額で判断されますので、ご注意ください。一つ一つの保険の解約返戻金は20万円未満でも、合計が20万円以上だと原則として換価対象になります。

2.解約返戻金が20万以上の場合

解約返戻金の合計が20万円以上の場合は、原則として換価の対象となります。すなわち、破産管財人により解約されて、返戻金は破産財団に組み入れられ、配当に充てられるということになります。

ただ、持病があってこれから保険に入れない、など事情がある場合もあると思います。そのような場合は、自由財産拡張の申立てをすることで自由財産と認めてもらえる場合もあります。自由財産と認められれば、本人の財産として保険契約を残すことができます。

もっとも、自由財産拡張を認めるにあたっての考え方は裁判所により異なると解されます。特別の事情がないと自由財産拡張を認めない扱いの裁判所もあれば、99万円以下だと比較的簡単に認めてくれる裁判所もあります。また、認められた場合に、代わりに返戻金と同額を破産財団に組み入れることを求められる場合があり、その場合は、数か月程度の分割も認められます。つまり、解約返戻金と同額を、数か月の分割で支払う形になります。一方、自由財産と認められれば組み入れは必要ないとする扱いの裁判所もあります。

なお、複数の保険がある場合に一部の保険だけを自由財産拡張申立ての対象とすることも可能です。

また、このように、解約返戻金額が20万円以上ある場合は、原則として同時廃止ではなく少額管財事件になると考えられます。なぜなら解約返戻金を換価して債権者に配当する業務を管財人が行う必要があるからです。なお、上記のように自由財産の扱いが裁判所により異なり、同時廃止・管財事件の判断にも影響する可能性があります。

5.まとめ

いずれにせよ、保険の解約返戻金の額は正確に把握して、裁判所に報告する必要があるため、原則として、解約返戻金の額がわかる書類ないし解約返戻金がないことが分かる書類が必要です。不明な点は、ご相談の際にご確認頂ければ、と思います。 

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