任意整理ができるかどうか

1、任意整理とは?

任意整理は、弁護士が債務者の代理人として債権者(カード会社や消費者金融など)と交渉し、将来利息をなくすとともに、月々の支払額も支払える範囲内に変更する方法です。

具体的には弁護士は受任直後に各債権者に受任通知を送り、各債権者は本人への連絡を停止、2週間~3か月程度で取引履歴を弁護士の事務所に送付、それを元に弁護士は債権調査を行い(グレーゾーン金利での取引がある場合はここで利息制限法での引き直し計算を行い、過払い金等の調査をします)、債務の額を確定します。

そうして、判明した債務について、まず、毎月いくら支払えるか、を弁護士と債務者本人で協議し、原資を決め、弁護士は、その範囲内に収まるように各債権者に交渉していきます。例えば、「毎月5万円なら支払える」ということであれば、数社から借りいれていたとしても全社合計で5万円に収まるように、弁護士は各債権者へ支払い可能額を割り振り、交渉します。

そうして、話が付いたら、和解書を取り交わし、あとは和解書に基づいて返済していくことになります。和解書には、「甲と乙は、乙の甲に対する債務の総額が60万円であることを認める。乙は、これを令和3年5月から令和8年4月まで、毎末日に、1万円ずつ、合計60回、甲指定の銀行口座に振り込む方法で支払う。振込先は以下の口座とする」というようなことが書いてあるわけです。(実際は、第1項、第2項・・ というように分けて書きます。また、これ以外に清算条項、懈怠約款、などを含めます)

返済は、基本は本人から行いますが、弁護士の事務所の預かり金口座を通して行うことも可能です。

2、任意整理のメリットとデメリット

任意整理は、

  • 将来の利息がなくなる(ほとんどの場合応じてもらえる)
  • 月々の支払額を交渉で決めることができる
  • 住宅ローンや自動車ローンをそのまま支払い、それ以外の借入のみを対象とすることができる
  • 破産のような資産を失う手続きではない(担保が付いている債権に介入した場合を除く)
  • 親戚や知人など個人からの借り入れなども対象外にできる
  • 裁判所の手続きではないので、書類収集の必要がなく、裁判所に行く必要もない

などのメリットがあります。

一方で

  • 基本的に債務の元本が減るわけではない(グレーゾーン金利での取引があった場合を除く)
  • 月々の支払額を交渉で決めるときに、分割回数の上限や返済金額の下限を決めている業者も多く、月々の支払額をいくらでも少なくできるわけではない
  • 他の債務整理手続き同様、信用情報機関には不利益な情報が登録される
    (いわゆるブラックリスト)

という問題はあります。

3、任意整理ができるかどうか

任意整理は、上記のように、一般的な債務整理の方法ですが、月々支払っていく手続きですので、返済していく家計の余裕がないと、うまくいきません。そこで、まず、家計の中でいくらであれば返済に充てられるかという「原資」を検討する必要があります。

例えば、毎月25万円の手取り収入がある家計で、家賃、食費、水道光熱費、電話代、教育費、など生活に不可欠な支出が20万円あるとすれば、計算上、支払いに充てられるのは5万円、となります(ここでは賞与はないと仮定します)。ただ、この場合、5万円すべてを返済に充てる計画を立てると家計に全く余裕がないことになり、急な出費があったときに生活が成り立たなくなるので、ある程度余裕を持たせて、例えば、3万円~4万円程度に収まるように計画を立てたほうが良いと思います。

ここで、もし、債務総額が300万円だとすると、返済に充てられるのが4万円の場合、75回の返済とする必要があることになります。もし、各社と交渉して、75回での支払いに応じてもらえれば任意整理ができる、ことになり、60回までしか無理、と言われた場合は、月5万円の返済となるので、この家計の場合は、微妙なところです。全く余裕がない状況で本当に大丈夫なのか、削れる出費はないか、残業で手取りが多い月に預貯金すれば大丈夫か、など考えたうえで、任意整理でよいのか、民事再生や自己破産のほうが良いのではないか、など検討する必要があると思います。

もし、ここで、債務総額が1000万円だとすれば、月々5万円での支払いで和解してもらえる可能性は極めて低いので、基本的に、民事再生か自己破産を検討する必要があるということになるでしょう。(あくまで、家計を考えて月額5万円が支払いに充てられる上限という前提でのお話です。収入が多くて月に15万円支払える、というのであれば、債務総額1000万円でも任意整理ができる可能性はあります)

このように、任意整理ができるかどうかは、債務総額、および、家計の余裕、で決まってくることになります。ただ、債権者であるカード会社や消費者金融等が最大何回での支払いに応じてくれるか、も成否を分ける要素となります。

4、任意整理で分割回数はどれくらいまで可能か?

家計の余裕がない場合、できるだけ長期での返済にしてもらい月々の支払額を下げたいという考えがあると思います。一方、債権者であるカード会社や消費者金融等から見れば早く返済してほしいということになります。そこで、交渉により返済回数を決めることになります。通常は3年~5年程度での返済にすることが多く、その範囲内での返済が可能なら、多くの場合、特に交渉が難航することなく、任意整理が可能です。つまり、多くの債権者は5年までであれば応じてくれる場合が多く、ただ、一部の消費者金融等は取引期間が短いと3年ないし4年までしか応じてくれない傾向があります。

特に非協力的な債権者であったり、訴訟で判決が出て長らく時間が経ってからのご相談であるなど、状況によっては3年~5年での和解も難しい場合もあります。

ただ、それ以上の長期分割を希望される方もおられるので(例えば、債務総額500万円だけども家計の状況から考えると月々に支払えるのは7万円程度まで、というような場合)、ここでは、その可能性について、検討してみたいと思います。

どの程度の分割回数が可能かについては、

  • 債権者の基本的な方針
  • どの程度柔軟な対応をしてくれる債権者か
  • その債権者に対する債務の額
  • 債務総額
  • その債権者との取引期間
  • 家計の状況

などにより、変わってきます。

概ね、上限60回(5年分割)までは応じる、というカード会社が多いですが、中には、取引が短い場合は5年ではなく3年~4年まで、というような方針のところもあります。一方、目安としては60回まででも、事情により72回(6年)、84回(7年)程度まで応じる、というカード会社や消費者金融もあります。なお、月々の最低弁済額を3000円~5000円に設定しているケースもあり、債務額が小さいときには、この点も返済回数に関係してきます。

特に事情がなくても120回(10年)までは応じるというカード会社もありますが、それは例外的で、5年を上回る分割回数を希望する場合は、家計の状況を説明し、長期での分割が必要であることを納得してもらわないと応じてもらえない場合も多いです。つまりは、基本は5年(60回)と考えていて、それでは返済しきれないやむを得ない事情があるのであれば、それを超える長期での分割も場合によっては認める、という方針のカード会社・消費者金融が多いように思います(5年を超えることは事情を問わず不可というところもあります)。したがって、60回を超えての和解は、生活再建のためにやむを得ない場合に限って、弁護士が一生懸命交渉すれば認められる可能性がある、というように考えていた方が良いと思います(もちろん、一般的には、100回分割と比べれば、70回分割程度であれば、比較的交渉成功のハードルが低いのは事実ですが)

また、事情に寄らず5年を超えることは無理な業者もあれば、案分より長い期間は応じないというところもあります。(なお、少数ですが、3年程度が上限というように5年分割も認めてくれない債権者もあるので、5年分割なら必ず大丈夫というわけではない点にも注意が必要です。また、業者の方針は変わることもあります)

たしかに、一部のカード会社とは120回(10年)程度の分割での支払いの和解ができたこともありますし、96回(8年)程度、84回(7年)程度、で和解できたケースは多くあります。ただ、標準的なところは5年60回、なので、債務総額を60回で割ってみた額を月々支払うことが難しそうな場合は、一般的には、弁護士と相談しながら、よく検討したほうが良い、とは思います。(ただ、どの債権者かによってかなり異なってくる部分もあるので、そういう意味でも、債務の問題に詳しい弁護士とも協議しながら検討したほうが良いでしょう)

なお、カード会社や消費者金融会社とキャッシングの取引を開始したのが2010年6月以前である場合、特に大手の場合は2007年以前である場合、にはグレーゾーン金利での取引が行われている可能性があり、その場合は過払い金が発生するなどにより、債務総額が減少する可能性もあるので、依頼時点ではなく、引き直し計算後の額を確認してから、任意整理が成功する可能性があるかどうかを検討する必要があります。

任意整理が難しそうな場合でも、民事再生、自己破産、など別の方法もあります。ただ、状況によって、「5年分割だと支払えるか微妙だけども、できる限り任意整理で解決したい。もう少し長期の分割なら何とか払えると思う」という場合もあるでしょうから、そういう場合も一度ご相談頂ければ、と思います(ただし、必ずできるというわけではなく、お話を伺ったうえで難しいと判断したら、民事再生や自己破産をお勧めする場合もあります。また、相談の上、納得がいかないという場合は相談だけで終わらせることもできます)。

当事務所では、債務に関しては相談だけなら無料なので、まずは弁護士にご相談頂ければ、と思います。お電話か電子メールでご予約の上、当事務所までご来訪をお願いします。なお、スケジュールが合えば、当日の予約も可能です。

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