任意整理における最長分割回数を決める要素

1、任意整理の基本的な仕組み

任意整理は、弁護士が依頼者の代理人としてカード会社や消費者金融会社等と交渉し、債務の返済条件を変更してもらう手続きです。

2、任意整理のメリット

任意整理を行うと

  • 従来グレーゾーン金利で取引をしていた場合、一連の取引の最初にさかのぼって利息制限法の適法利率上限での引き直し計算を行うので、債務残高が減ったり、過払い金を返還請求できる場合がある。
  • 将来利息(和解後の利息)をゼロにするという和解をするのが原則であり、ほとんどの場合その条件で和解できるので、返済した分だけ債務残高が減ることとなり、完済の目途を立てることができる。また、結果的に支払う総額が少なくて済む。
  • 月々の返済額を交渉で決めるため、従来より少ない額で和解できることが多く、家計を改善できる。
    などが大きなメリットです。

3、任意整理の限界

一方、任意整理には、

  • グレーゾーン金利での取引がなかった場合には、債務の元金は減らない
  • 各債権者において分割回数の上限があり、月々の返済額を減らそうとしても限界がある
    という意味で、生活再建という視点から見たとき、限界があると言わざるを得ません。破産手続きのように債務の免責を得たり、民事再生のように原則5分の1に債務を減額できるような手続きではないので、債権者の反応によりどこまで月々の支払いを減らせるかが変わってくる面があります。

4、分割弁済の提案に対する各債権者の反応

上記のように、どの程度長期の分割を認めてもらえるかは、月々の返済額をどこまで減らせるかということに直結するので、重要です。そこで、特に、債務が多い場合や支払い原資が少ない場合には、できるだけ長期分割を認めてもらうことが任意整理の成功につながります。ただ、どの程度までの長期分割が認められるか、はケースによって異なります。すなわち、可能な分割回数について、以下のように、状況に応じて債権者の反応は異なってきます。

1,債権者内部の方針

各債権者は任意整理における分割弁済の回数について、概ね、方針を持っています。5年程度まで、という方針の業者が多いですが、それ以外の場合もあります。概ねの上限を決めていても比較的緩やかな債権者もあれば、厳格に上限回数を決めていて、1回でも多い回数での和解は無理というところもあります。

2,債務額

その債権者に対する残高が多い場合は、比較的長期を認めてくれるケースも多くなります。例えば、一般に、債務が50万円の場合より、300万円の場合の方が長期分割を認めてもらえるケースが多いです。

3、債務総額と原資の関係

債務総額を原資で割ると平均的に何回で返すことになるか、という数字が出ます。例えば、債務総額が300万円で、原資(支払いに充てられる金額)が5万円なら、60回分割にすれば無理なく完済できるわけです。

回数にもよりますが、この計算による回数までであれば応じるという回答が来ることはよくあります。按分という言い方をすることもあります。
*この点で他社に対してより有利な扱い(短い回数での返済の和解)をしている場合は、同等の回数しか認めないという方針の業者もあるようです。

4、取引期間

弁護士が介入する前の取引の期間によって分割回数の上限を決めている債権者も多いようです。すなわち、長期間取引があった方には任意整理においても長期分割を認める、借りてから日が浅い方の場合は比較的短い分割しか認めない、という対応です。

5、家計の状況

債務者の家計の状況も考慮して、場合によってはかなり長期の分割も認めてくれるという債権者もあります。債権者から見ると、速やかに完済してほしいという考えがある一方、無理を言って破産や再生に追い込んでしまうと結局債権者も損失を出してしまうので、無理のない範囲で完済してほしいと考えているケースも多く、事情を丁寧に説明すると、通常より長期の分割を認めてもらえる場合があります。

5、各債権者の反応の概要

では、実際に分割弁済で和解をするとして、月々の支払いを少なめにするため、長期での分割を希望した場合、どのような反応が予想されるでしょうか? 時期によっても変動がありましたが、現在の状況をおおよそまとめると以下のような感じです。

  • カード会社は、5年を上限としてそれ以上は基本認めてくれない業者、と、それ以上でも6年か7年程度なら比較的柔軟に認めてくれる業者、そして、10年でも問題なく認めてくれる業者、に概ね分けることができます。
    ニコスは今のところ特に事情がなくても120回分割に応じてくれます。オリコは金額が大きいと比較的長期での和解に応じてくれる傾向があります。ポケットカード、ジャックス、なども長期分割の提案が通りやすい傾向があります。クレディセゾンも5年を超える和解は比較的通りやすいようです。エポスは債務額により5年~7年程度が概ねの上限のようです。
    一方で5年を超える分割は応じない、というカード会社もあるので、注意が必要です。
  • 消費者金融は、長期分割に厳しい業者(例えば、アコムは取引期間等に応じて3年~4年しか認めないことがほとんど。取引期間が極端に短いと2年分割しか認めないという場合もある。モビットは取引期間に応じて3年~5年が上限)、早期に和解すれば長期分割も可能な業者(例えば、レイクは100回を切るくらいで和解できたケースもあります)、概ね60回が原則の業者(プロミスなど)に分かれます。ただ、消費者金融会社の対応方針は比較的短期で変わることがあるように感じています。
  • 債権回収会社は、多くの場合、分割での和解が可能ですが、頭金を求められることも珍しくありません。

また、一般に、カード会社は元金(及び取引履歴開示日までの利息等)で和解してくれることが多いですが(業者により、また、和解までの期間等により、例外あり)、消費者金融や債権回収会社は和解日までの利息・遅延損害金を含む金額にこだわることも多く(ただし、業者によっては早期に和解すると免除してくれる場合もある)、そういう意味でも速やかな対応が望ましいと言えます。

6、任意整理の相談は熟練した弁護士へ

任意整理においては、ご依頼者様の希望、家計の状況、等を考えつつ、返済計画を立てて、各債権者と交渉する必要があります。債権者の反応は、上記のように、どの業者か、その業者への債務額、債務総額と原資、債務者の家計の状況、従前の取引期間、など様々な要素で変わってきます。それらを把握し、必要に応じて工夫をしながら粘り強く交渉し、依頼者の月々の返済をできるだけ軽くして生活再建に資することのできる和解を実現するには、知識と経験が必要です。
時には、一部の債権者への支払いが終わった後他の債権者への支払いを増やすいわゆる階段和解など工夫が必要なこともあります。少額で早く終わるところの返済終了後や、未介入のオートローンの返済後に、あるいは、お子様が学校を卒業して学費がかからなくなるタイミングで返済額を増やす、というような工夫をするのが一例です。また、介入後早期に和解すれば支払い開始は費用積立後でもよくその場合のみ経過利息を付けずに長期分割も認める、というような提案をしてくる債権者もあり、そのような場合、速やかな対応が有利な解決に必要です。もちろん、比較的短い期間で完済したいという場合は、御希望に沿った和解を進めていきます。
当事務所では、これまで数多くの任意整理案件を扱ってきました。任意整理で生活を再建したいと考えておられる方は、ぜひ、ご相談ください。
(ただ、家計の状況等によっては民事再生や自己破産など他のより適した手続きをお勧めする場合がある点はご了承ください)

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