民事再生(小規模個人再生、給与所得者等再生)は、住宅を残したまま一般の債務を大幅に縮減できる、国家資格の制限もない、などで比較的今の生活を大きく変えずに、かつ状況を大きく改善できる可能性がある手続きとして、近年よく知られています。当事務所でも、多くの取り扱い経験があります。
ただ、この手続きは必ず可能というわけではありません。

1、民事再生手続きそのものができるかどうかという問題

 ます、個人再生は住宅ローン以外の、一般の債権額が5000万円以下の場合にだけ可能です。それを超える場合は、通常再生によることになります。また、民事再生は、再生計画案を裁判所に提出して認めてもらうことで成立します。しかし、計画履行の見込みがない場合は、裁判所は認可しません。それゆえ、家計の状況等に照らして再生計画案を履行できないと思われる場合は、再生はできないこととなります。再生手続きは自らの力で生活を再建することが前提となっているため、別に暮らす親族からの援助を前提とした案は基本的に認められないと思います。一方、同居している家族の場合は、ケースによりますが、一般に夫婦の場合は家計が一つなら認められる可能性が高いと考えられます。微妙なのが、同居している親子の場合で、例えば子供は同居していてもいずれ独立する可能性もあり、その点を裁判所がどう判断するか、ということになると思われます。
 また、履行可能性の問題の他に、小規模個人再生の場合は、債権者の異議により不許可となるリスクもあります。すなわち、債権者の半数以上または債権額の過半数の異議が出れば再生は認められずに終了してしまいます。もっとも、多くのカード会社や消費者金融等は異議を出すことは少ないです。ただ、近年は一部の大手消費者金融が異議を出してくるという話もあり、そういう点で不安な場合は、異議による不許可という制度がない給与所得者等再生を検討すると良いでしょう(ただし、会社員や公務員などの給与所得者であること、収入の変動が少ないこと、という要件が加わります)。

2、住宅資金特別条項を使えるかどうかに関する問題

 住宅を守るためには住宅資金特別条項を使える必要があります。いくつか条件がありますが、まず対象になるのは居住用の住宅とその敷地に限られます(店舗共用の場合は面積で判断します)。また、その住宅と敷地に住宅ローン(住宅資金貸付債権)の抵当権が設定されている必要があり、かつ、それ以外の抵当権が付いていてはいけません。まず、住宅ローンであるかどうか、という点で問題になることがあるのが諸費用ローンです。諸費用ローンの貸付が別途あり、それについても抵当が付されていることが珍しくないところ、条文通りに解釈すると住宅ローンそのものではないため当てはまらないようにも見えるのですが、実務では金額や用途などを考慮して基本的に認められていると考えられます。ただ、状況により認められないこともありうるので、注意が必要です。諸費用ローンがあると使い道等についての説明を丁寧に行う必要があるでしょう。
 また、住宅ローンではない一般の借り入れについての抵当権が居住用住宅に設定されていると認められません。

3、返済額に関する問題

 仮に再生が可能という場合でも、返済額が大幅に減らせないと生活再建の効果は限定的です。よく問題になるのは、清算価値です。再生計画案は清算価値保証原則を満たす内容にする必要があります。清算価値保証原則というのは、簡単に言うと、持っている資産の額より減額することは認められない、ということです。例えば、時価200万の自動車(ローンはないものとします)を持っている人が、債務を100万円まで減らせるとなると、債権者から見れば公平ではありません。そこで、民事再生法は清算価値(破産手続きを取った場合に財産を清算して換価した場合の価値)を下回る再生計画案は認めないとしています。この点でよく問題になるのが、住宅の価値です。もっとも、住宅ローンの額は差し引きます。それゆえ、住宅ローンの方が大きい場合はオーバーローンといって問題にならないのですが、価値の方が高い場合には、差額分が資産となります。その他、退職金の8分の1(当分退職する予定がない場合。退職の予定が具体的にある場合は4分の1で計算することとなる可能性があります)、預貯金、保険の解約返戻金、など様々なものが資産として計上されます。未分割の相続財産についても、法定相続分で計上する必要があります。そして、再生計画案では、清算価値を下回らないようにする必要があるため、例えば、清算価値が300万円だと債務をそれ以下に減らすことが認められなくなります。すると、もともとの債務が1000万円だったとすると通常は5分の1である200万円まで減らせるところが300万円までしか減らせないこととなり、効果が減じられてしまいます。
 もう一つの問題は、給与所得者等再生だと可処分所得基準も満たす必要があるということです。可処分所得は計算方法が決まっていますが、収入が比較的多く扶養家族が少ない場合には高額になりがちであり、その2年分を下回ることができないとされているため、給与所得者等再生を行う場合には、その点も気を付けないといけません。

 (以上は、あくまで一般的に問題になりがちなところを大まかに解説したものであり、必ずしもすべての条件を解説したものではありません。個別の案件についてはご相談ください)

民事再生は、条件次第では持ち家を残しつつ債務の大幅な減額が可能で、実際に多くの方は住宅を守りつつ生活再建に成功しています。ただ、場合によっては、手続きの利用が難しかったり、必ずしも効果的ではないこともあります。上記のように複雑な手続きなので、民事再生をご検討の方はまずご相談ください。当事務所では多くの民事再生案件を成功させてきました。小規模個人再生も給与所得者等再生も実績があります。

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