法人破産は早めの相談が望ましい理由
1.法人破産の流れ
法人の破産手続きは、最終的に法人の債務をすべて清算し、法人を解消することを目的に行われます。ここでは、法人の代表者が申し立てる自己破産の場合を前提に解説させていただきます。
まず、自己破産においては、弁護士への依頼と裁判所への申立ては異なる概念です。すなわち、まず依頼頂き、その後準備ができたら裁判所に申し立てをする、という形になります。もっとも、弁護士への依頼と同時に弁護士は各債権者に受任通知を送る等必要な業務をはじめます。それにより銀行やカード会社等債権者から破産予定の法人や代表者への連絡は止まります。また、破産予定の法人は、依頼と同時に債権者への支払いを止める必要があります。
さて、法人の自己破産の場合、弁護士に依頼と同時に事業を停止するのが原則です。それから弁護士費用と実費を弁護士に支払い、かつ、管財予納金が準備できたら裁判所に申し立てをする、という流れになります。それゆえ、ご依頼の時点で法人に充分な資産があれば、それを弁護士費用と実費に充てて、残りは管財人に引き継ぐことを前提に、速やかな申立てが可能となります。
2.弁護士費用、実費、管財予納金それぞれの意味
破産手続きについては、弁護士費用、実費、管財予納金が必要になりますが、それぞれどのような性質のものでしょうか? まず、弁護士費用は、弁護士自身の報酬です(弁護士法人の場合は、法人として受け取ります)。次に、実費は、郵便代金、申立書に貼付する印紙代や官報公告費、など、最終的に弁護士以外が受け取る各種費用を指します。これらも弁護士の事務所が立て替えて支払うため、弁護士(法人)の預かり金口座に入金いただく必要があります。最後に、管財予納金があります。これは管財人が活動するための費用です。それゆえ、管財予納金も申し立てまでに準備する必要があります。ただし、法人の場合、破産手続きを申し立てる時点である資産はすべて管財人に引き継ぐことになるので、その額が充分である場合は、別途予納金を準備する必要はなく、管財人は引き継がれた財産から管財人は自身の報酬と活動費用を確保し、残りを債権者への配当に充てます。
以上のように、法人破産の申し立ては、弁護士費用、実費、管財予納金を準備で来てから行うことになります。もし、管財予納金が不足している段階で申し立てをしても、書類は受け取ってもらえるものの、開始決定が出ないままになってしまいます。つまり、裁判所で事件番号は付くけれども実質的に手続きが始まらないままになってしまいます。
3.法人に資金的余裕がない場合
弁護士費用や管財予納金を用意するだけの資金がない場合は、弁護士にご依頼により債権者への支払いを止めて、それから用意していただくことが可能です。ただ、法人についてはその時点で業務を停止するので、それ以前に行った仕事により発生した売掛金や資産の処分以外に新たに収入が発生する可能性は低いのが通常です。そうすると、代表者の方が他で仕事をして分割で積み立てる、というような形をとることが多く、申立てまで時間がかかることが多くなります。
4.申立てまで時間がかかると何が問題か?
個人の破産だと弁護士にご依頼頂いてから数か月かそれ以上の時間をかけて費用を積み立てていただき、それから破産を申し立てるということはよくあります。法人でも、すでに事業を停止して時間が経っている法人の場合は、この方法で問題がないことも多いです。あるいは、小規模な法人で債権者が銀行や信用金庫、カード会社など金融機関が中心で、従業員もおらず、代表者の自宅以外にオフィスはない、というような場合は、個人の場合と同様ある程度長期間の費用の分割でも通常は問題ありません。
問題は、現に動いていて金融機関以外にも多くの債権者がいる、代表者やその家族以外に従業員がいる、法人として借りている賃貸物件がある、というような場合には、時間をかけることによるデメリットがあります。すなわち、まず、買掛債務の相手方、特に個人事業主の方は金融機関と違って必ずしも金銭的に余裕がないので、破産をするという理由で支払いを止めると苦情を言ってくることがあります。しかし、一部の債権者にだけ払うことは偏波弁済になってしまうので、できません。また、労働者(従業員)がいる場合、給与の未払いが発生すると、生活に困ってしまいます。また、公的な立替払い制度もありますが、そのためには法人が破産手続きを勧めないと、制度の利用に時間がかかることになりかねません(破産手続きがとられなくても使えないわけではないのですが、労働基準監督署長の認定が必要となります)。また、オフィスや工場などの賃貸物件についても、原状回復する費用がない場合はそのままの状態になってしまいオーナーさんに迷惑をかけることになりかねません。このように、時間がかかると、その間債権者などの関係者が不安定な地位に置かれることが問題と言えます。 早期に解決するためには、速やかに裁判所に破産手続きを申し立てて開始決定を出してもらい、破産管財人による処理を進めてもらう必要があります。もちろん、代表者本人は協力しないといけませんが、管財人が付くことで破産に伴う様々な処理が進んでいくので、まずは裁判所に破産手続き開始決定を出してもらうことが重要です。それゆえ、現に動いていて債権者や従業員、賃貸物件の所有者など様々な関係者がいるケースでは、あまり時間をかけずに早く裁判所に申し立てをすることが望ましいのです。
5.破産手続きにはどれくらい費用が掛かるか?
まず、弁護士費用は法人の規模や債権者の種類、従業員の有無、賃貸物件(不動産)の有無、その他の事情により弁護士が行うべき業務の内容がどの程度あるかが変わってくるので、弁護士報酬も一概には決められないです。当事務所では、法人代表者の分と合わせて80万円(税込み88万円)程度から受けていますが、ある程度の規模がある法人なら、100万円(税込110万円)や、それを超える場合もあります。
また、実費は数万円程度のことが多いですが、管財予納金は弁護士費用と同様、法人の規模等により異なります。個人の破産と同様の20万円で良い場合もありますが、やはり、管財人の業務が多い場合は、それなりの額が必要です。金融機関以外の債権者が多い、労働債権の未払いがある、賃貸物件の退去が済んでいない、などの事情は管財予納金を多めに求められる理由となるでしょう。なお、管財予納金の額は、裁判所が予想される管財業務の内容や量を勘案しつつ決定します。当初申立人側が用意した額で不足している場合は、裁判所から追加の指示があってそれを用意してから開始決定ということもあります。
6.早めに手続きを始めたほうが良い理由
このように、法人破産には、少なく見ても100万円以上の費用が掛かるのが通常なので(例外的により少ない額でできる場合もあります。例えば代表者の方は債務がなく法人のみが破産をすれば解決するような場合にはより低くでできる場合があります)、法人の資力に余裕があるうちに進めたほうが良いと思います。
もし、手続きを進めるのに充分な費用はないが一方で買掛債務などで個人の債権者も多く、従業員の給与未払いもあり、賃貸物件からの退去費用もない、というような状態になってしまうと、結局、速やかな破産申し立てや開始決定を得ることができないまま時間が経ってしまい、結果として関係各方面に迷惑をかけてしまう恐れもあります。
そのような事態を避けるためには、この先の資金繰りのめどが立たない状況になったら、まだ手元の資金に若干の余裕があるうちに破産の決断をしたほうが良い場合もあります。口座にはあまりお金がなくても、回収予定の売掛金があれば、それを費用に充てることも考えられます。一般に、そのような余力があるうちにご依頼頂くほうが、破産手続きを進めやすいと考えられます。
もちろん、どのタイミングで決断するか、は難しいところではありますが、早めに弁護士にご相談頂くことをお勧めします。当事務所では、多くの法人破産案件を扱ってきました。製造業、建設業、小売業、教育関係、飲食業、娯楽業、など様々な業種について、代理人として破産を申し立てた経験があります。すでに事業を停止している段階でご相談を受けた案件も多いですが、現に事業が行われている段階でご相談を受けて受任、申立てまで進めた案件も多くあります。実際にご相談頂ければ、個々のケースに沿ったアドバイスをさせて頂くので、まずはご相談ください。
ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪ください。相談だけなら、無料です。