破産手続きをしても保険は残せるか?

1.保険は換価対象となる財産か?

破産手続きは、原則として管財人が資産を換価して債権者に配当することとなっています。すなわち、持ち家、一定額以上の預貯金、一定以上の価値のある自動車などの様々な財産はお金に換えて債権者に配るというのが原則です。では、保険も財産として換価の対象になるのでしょうか?

2.そもそも保険は財産か?

保険は財産でしょうか。一般的に財産というと、現金や預貯金、住宅や自動車のように財産的価値があるものを思い浮かべると思います。その点、保険は事故などの際に補償をしてくれるという契約であり、財産という印象は薄いかもしれません。しかし、保険も破産手続きにおいては財産として扱われます。なぜなら、解約すればお金が戻ることがあり、それを配当に充てることができるからです。

3.実際に保険は解約されるか?

上記2のように保険の中には解約すればお金が戻るものがあります。このお金を解約返戻金といい、保険会社に問い合わせると書面等で教えてくれます。では、解約返戻金がある場合必ず管財人によって解約されてしまうのでしょうか。今後の不安に備えて保険を維持したいケースもあると思いますが、実際のところ、どのように扱われているのでしょうか。

実は、解約返戻金があっても、必ず解約されるわけではありません。解約返戻金の金額と、自由財産拡張申し立ての成否によります。

ここで東京地裁立川支部の扱いを例に解説します。まず、解約返戻金が20万円未満の場合は解約されません。この場合は、本来的自由財産として扱われます。すなわち、破産手続きをしても管財人が管理せずに破産者がそのまま保持できる財産とされるわけです。ただし、複数の保険がある場合は解約返戻金の額は合計で考えるので、すべて合計しても20万円未満であるかどうかで判断されます。

それゆえ、解約返戻金がないタイプの保険しかない場合、基本的に解約されることはなく、そのまま残せることになります。自動車保険や火災保険の多くは解約返戻金がないか、少しだけなので、それらの保険しかない場合はまず解約されることはないといってよいでしょう。一方、生命保険や学資保険は長く入っていると20万円を超える解約返戻金があることは珍しくありません。しかし、下記のようにそのような場合でも保険を残せることがあります。

すなわち、解約返戻金の合計額が20万を超える場合でも、裁判所に自由財産拡張申し立てをして認められれば解約されずに残せます。

4.自由財産拡張申し立てとは?

破産においては身の回りの品など本来的自由財産とされているものがあります。それ以外のものは基本的には管財人により換価されて配当の原資となるのですが、それでは生活に支障があるという場合には例外的に自由財産の範囲を拡張することが認められます。これを自由財産拡張の申し立てといいます。例えば、医療保険に入っていて解約返戻金が50万円あるという場合、東京地裁立川支部の基準に当てはめると、解約返戻金が20万円以上になっているので本来的自由財産ではありません。しかし、破産者が病気がちで再度保険に入ることが難しいとします。一方で病気がちであれば医療保険の重要性は否定できないでしょう。このような場合には、この保険を自由財産と認めたほうが破産者の生活再建に資することになると考えられます。このような場合に、破産者が自由財産拡張の申し立てをすれば、裁判所はこの保険を破産財団から外して自由財産とすることがあります。ただし、この判断は裁判所の裁量に属することなので、事情があれば必ず認められるというわけではなく、また、拡張対象が99万円を超えると認められるハードルが高まるともいわれています。

もっとも、99万円を超える場合でも、超えた分を別途破産財団に組み入れる(お金を破産管財人に支払う)ことで保険そのものは残せるという場合もあります。

自由財産拡張の話は複雑ですが、弁護士に依頼して破産手続きを行っている場合は実際に自由財産拡張の申立書を起案、提出するのは、通常、代理人弁護士ですので、破産者の方は保険を残してほしい場合、その保険を残す必要性や保険の内容をよく弁護士に説明して、自由財産として残す手続きをしてほしいと伝えるとよいでしょう。

なお、自由財産拡張申立書を作成するのは代理人弁護士であり、また、最終的に判断するのは裁判所ですが、裁判所が判断するに当たっては管財人の意見も参考にされますので、管財人面談の際に管財人にも当該保険を残す必要性についてよく説明しておいたほうが良いと思います。

なお、さいたま地裁川越支部では99万円までは比較的容易に自由財産拡張が認められますが、現金、預貯金、自動車、解約返戻金、その他諸々の資産を合計した額で判断される点に注意が必要です。ただ、事情によっては99万円を超えても自由財産拡張が認められうるのは他の裁判所と同様です。

5.申立て前に解約して費用に充てても良いか?

ここまでは保険を残したい場合について検討してきましたが、逆に先に解約して、その解約返戻金を弁護士費用や管財予納金に充てることは基本的に問題ないと考えられます。ただ、費用の積み立てが終わってからではその余地はなくなってしまうので、保険の解約返戻金で弁護士費用や管財予納金を支払いたい場合は依頼の段階で弁護士に希望を伝えたほうが良いでしょう。

6.保険の維持についてのまとめ

東京地裁立川支部の扱いを元にまとめると、

  • 保険の解約返戻金が合計20万円未満の場合は、換価の対象となる財産として扱われないので、保険は残せる
  • 解約返戻金が20万円を超える場合でも自由財産拡張の申し立てが認められれば保険を残せる。認められるかどうかは、必要性によるところが大きい。
  • ただし、解約返戻金の合計が99万円を超える場合はその全部を自由財産として認めてもらうことは一般的には難しい

ということができます。なお、自由財産拡張の申し立てについて専門的見地からの検討が必要ですので、破産申し立てを弁護士に依頼する場合、保険をどのようにしたいかについての希望も早めに弁護士にご相談ください。

関連リンク:債務整理Q&A 自由財産とは何ですか?

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