資産がある場合の破産と再生の違い

資産がある場合の法的整理の問題点

資産がある場合に、自己破産や民事再生をしようとすると、資産がない場合と比べて、考慮しないといけない事項が増えると思われます。そこで、資産がある場合における法的整理に関し、破産と再生を比較しつつ、検討してみようと思います。

破産の場合

破産手続きは、概要として考えると、資産を換価し、債権者に配当する手続きです。一方、債務者は免責が認められれば債務(税金などの比免責債権を除く)の支払いをしなくてよくなります。したがって、資産がない場合には、大きなデメリットはないのですが(官報に掲載される、信用情報機関にいわゆるブラックの登録がされる、など事実上の不利益はあります)、資産があると、時には大きな問題が生じます。

すなわち、持ち家などの財産は管財人が売却し、その売却益は債権者に配当するという仕組みなので、破産者は原則として資産を失ってしまうことになります。持ち家だけではなく、保険が解約される(解約返戻金が20万円以上の場合)、退職金(通常は8分の1で計算。退職予定が具体化していると4分の1とされる場合あり)相当額を管財人に組み入れないといけない、などの不利益もあります。

もっとも、20万円未満の預貯金(各金融機関合計)、解約返戻金が20万円未満の保険(各社合計)、20万円未満の価値の自動車、身の回りの品、のように手元に残せるものもあります。ただ、それを超える資産がある場合は、原則は、換価されて失うことになってしまいます。この点が破産手続きの最大のデメリットと言えるでしょう。

そうすると、持ち家を失うこと以外に、例えば未分割の相続財産があった場合に、その持ち分の処分のために管財人が共同相続人と交渉する必要が生じて、実家に迷惑をかけてしまう恐れもあります。例えば、管財人が共有持ち分を他の相続人(特に実際にその物件に住んでいる人)に売却することで処理しようとする場合もあります。これは、そこに住んでいる人にそのまま住み続けられるようにという配慮であるのですが、それによってその相続人には手続きのことを知られてしまうことになります。そこで、遺産分割を終えていない相続財産がある場合には、共同相続人に手続きを秘密にできない場合がある、というのがデメリットの一つと言えます。

また、自動車についても、ローンが残っていて譲渡担保がついている場合は基本的にクレジット会社が引き揚げてしまいますが、そうではない場合でも、破産手続きでは、20万円以上の価値がある自動車は換価対象になるため、結局、失うということになります。

 その他、保険の解約返戻金も財産とみなされるため、解約返戻金が合計20万円以上ある場合は、保険は原則として解約されてしまいます。

このように、原則として資産を失う手続きであることによるデメリットはあると言えます。なお、保険や担保の対象ではない車について、自由財産拡張の申し立てや価値の財団組み入れなどで残せる場合もあります。

再生の場合

民事再生は資産を換価する手続きではありません。もっとも、債権者平等の原則が適用されるので、一部の債務だけを返済し続けることは原則としてできません。もっとも、住宅ローンについては、住宅資金特別条項という仕組みを使うことで支払い続けることができ、それによって抵当権の実行を免れ、持ち家を残すことができます(適用には要件がありますので、必ずこの方法を使えるわけではないですが、多くの方がこの方法で持ち家を残しつつ生活の再建をしています)。

しかし、車のローンは支払いを止めないといけないので、ローンの残っている車は基本的に引き上げになってしまいます。(事業用の場合等には別除権協定で残せる可能性はありますが)

一方、抵当権など担保に入っていないものは、換価対象にはなりません。したがって、例えば、ローンによる抵当権が付いていない不動産を持っていた場合、換価対象にはなりません。しかし、問題は、清算価値です。すなわち、再生の場合は、「債務残高が500万円以上1500万円未満の場合は5分の1」というような最低弁済額の基準の他に、清算価値基準を満たす必要であり、清算価値とは、仮に破産をした場合に破産財団を形成することになる資産の額のことを言います。簡単に言えば、その時点で持っている資産の総額から破産でも手元に残せる分を引いたものと言ってよいでしょう。例えば、持っている資産の総額が300万円なら300万円未満まで債務を減らす再生計画案は認められません。

そして、清算価値は様々な資産を足して計算するので、

  • 預貯金30万円
  • 保険の解約返戻金50万
  • 自動車50万円
  • 不動産100万円
  • 退職金(8分の1)30万円

で他には資産はない場合、清算価値はこれらを足して260万円となります。

この関係でよく問題になるのが相続財産であり、未分割でも資産とされるので計算に入れないといけません。ただ、法定相続分に基づく持ち分で計算するので、例えば、全体が1000万円の価値があっても自分の法定相続分が4分の1なら250万円と評価されます。いずれにせよ、再生の場合、資産については、その価値が弁済額の下限の基準の一つとなるのみであり、実際に換価されるわけではありません(担保権の実行に基づく場合を除く)。それゆえ、例えば、未分割の相続財産がある場合に、共同相続人に影響を与えるに行うことも基本的に可能だと思われます。また、ローンの残っていない車などはそのまま所有を続けることが可能です。さらに、保険の解約もありません。そういう意味では、再生のほうが比較的生活環境に影響を与えずに生活の再建を図ることができるということができます。

ただ、再生の場合の返済額は清算価値を下回ることができないため、資産の額が多い場合には、そもそも再生のメリットがなくなってしまうという問題もあります。

資産がある場合に破産と再生のどちらを選ぶか?

まず、資産の額が債務額を上回る場合は、基本的に、資産を売却等して返済すればよいので、実は、破産手続きを申し立てる場面ではないということになります。もっとも、個人の場合債務超過は手続き開始の要件にはなっていないし、支払い不能であれば破産手続きを用いることはできるとも思われますが、敢えて破産手続きをとる必要性は低いと思います。

また、再生については、清算価値が現在の債務額を上回るのであれば、再生のメリットはほとんどないので、やはり、利用する必要はないでしょう。もっとも、清算価値がある程度あって返済額は清算価値基準になるけれども、その額は債務総額よりは少ない(再生が成功した場合にはある程度債務の減額が見込まれる)、という場合は、悩ましいところではあります。

さらに、持ち家を残したい場合には、破産だと原則として難しいので、再生を選択して住宅資金特別条項を用いるのが原則ということになります。

多くの方が迷うのは、例えば、資産として、価値が100万円程度の自動車があるので破産だと換価対象になってしまう、とか、退職金の8分の1の額が150万円ほどで破産だと破産財団への組み入れ(つまり、その額を管財人に支払う)に時間がかかりそう、というような場合です。こういう場合は、その資産を残すメリットや残したいという気持ちの有無、破産財団へ組み入れる資金の原資、なども考えてより良い方を選ぶことが重要です。このような話は、かなり専門的な知識がないと判断が難しいところなので、ぜひ、弁護士にご相談ください。

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