民事再生において住宅の価値が重要である理由

1.民事再生には持ち家を残すことができる手続きが用意されている

条件が整えば、民事再生(小規模個人再生、給与所得者等再生)を行うことで、住宅を残したまま債務を大きく減額することができます。では、なぜ、民事再生では住宅を残せるのでしょうか?

まず、民事再生は、自己破産と異なり、もともと、資産を処分する仕組みではありません。もっとも、もし、住宅ローンを支払わなければ、抵当権を実行されてしまうので、結局住宅を失うことになってしまいます。仮に、一般債権同様支払いを停止して減額するのであれば、抵当権実行で住宅を失うことになってしまうでしょう。そこで、民事再生法は「住宅資金特別条項」という仕組みを設けました。これを利用することで、住宅ローンだけはこれまで通り払い、それ以外の債務のみを減縮の対象とすることができることとなりました。

つまり、住宅ローンについては(場合により手続きにより返済方法を変更するとしても)減額せずに支払いを続け、一方でそれ以外の債務を減額することができるわけです。

2.民事再生ではどの程度債務を減額できるか?

民事再生では、大幅に債務を減額できる仕組みになっています。しかし、それも下限があります。これを「最低弁済額基準」といい、以下のようになっています(民事再生法231条2項3号、4号を参照)。なお、ここでいう元の債務額に住宅資金貸付債権(住宅ローン)の額は含みません。また、5000万円を超える場合は小規模個人再生、給与所得者等再生は使えないので、それ以下の額の債務額の場合について記載しています。

元の債務額変更後の下限
100万円~500万円100万円
500万円~1500万円元の債務額の5分の1
1500万円~3000万円300万円
3000万円~5000万円元の債務額の10分の1

3.清算価値基準とは?

もっとも、必ず上記の「最低弁済額基準」まで減額できるわけではありません。同時に「清算価値基準」を満たす必要があるからです。清算価値基準は、簡単に言えば、「破産した場合に換価して配当に充てることができる額より減額はできない」ということです。もう少しわかりやすく言うと、持っている資産の額よりは減額できない、と考えればよいでしょう。

ただ、ここで、持っている資産の額というのは、破産の場合に手元に残せる額は除くわけです。それゆえ、細かい計算方法は、裁判所における破産の際の自由財産に対する考え方の違いから、裁判所により異なる部分があります。例えば、東京地裁とさいたま地裁では若干異なります。ただ、不動産の価値の計算方法は、裁判所にかかわらず大きくは変わらないと思います。

なお、小規模個人再生では最低弁済額基準と清算価値基準を満たせばよいですが、給与所得者等再生では加えて、可処分所得基準も満たす必要があります。

4.なぜ住宅の価値が問題か?

上記の清算価値を計算する際、様々な資産を計算に入れます。不動産、預貯金、現金、退職金(ただし基本的に8分の1の額で計算)、保険の解約返戻金、など、です。そのうち、やはり、高額になりがちなのは不動産です。ただ、抵当権が付いている場合、その額は差し引いて計算します。例えば、3000万円の価値があっても住宅ローンの抵当権が付いていて残額が2800万円なら、価値としては200万円となります。この場合、200万円の資産がある、ということになり、他に資産がない場合、200万円が清算価値となるわけです。そうすると、仮にもともとの債務が500万円だとしても、5分の1の100万円ではなく、200万円は支払う再生計画案にしないといけないわけです。

逆に、オーバーローン(住宅ローンのほうが高い)場合は、資産としての価値は、ゼロとなります。

もし、住宅の価値が3000万円、住宅ローン残高が2500万円、であれば、他の資産がないとしても最低500万円は払う再生計画案とする必要があり、それなりに支払い能力がないと履行が難しくなるでしょう。

このような意味で、住宅付き再生の場合、住宅の価値が重要になってきます。住宅の価値が高いと、清算価値基準となり、事前に思っていたほどには減額できないということがありうるわけです。

5.住宅の価値の調べ方

住宅の価値は、市場価格を用いることになっているので、原則として、不動産業者に査定を頼んで送ってもらうということになります。東京地裁の扱いだと最低2社以上の査定を提出する必要があり、裁判所に提出した査定の平均を採用して清算価値を計算することとなります。査定は無料査定でよく、いわゆる机上査定で問題ありません。ただ、査定書の内容(査定額に十分な根拠があるか)次第では、裁判所・再生委員に信頼性を認めてもらえず別業者等で取り直しを求められる場合はあります。

また、住宅ローンの額を差し引くために住宅ローンの償還計画表も必要となります。これは何年何月にいくら返済するか、という表で、これを見れば、ある時点における住宅ローンの残高が分かるようになっています。

なお、清算価値の判断時は、基本的に再生計画認可決定時となります。もちろん、実際に認可決定がいつされるかははっきりとはわかりませんが、再生手続き開始決定の時にその後のスケジュールの予定が決まるので、そのスケジュールによる認可決定予定の日時における住宅ローンの額を、査定額から差し引いて、不動産の価値を算出するのが一般的です。なお、通常、査定は取り直す必要はなく、申し立ての際に用いたものを使います。

住宅以外の資産(預貯金など)も認可決定時点に最も近い時点ということで再生計画案提出時点の額を用いる場合もありますが、預貯金のように変動しやすいものについては申立て時点の額をそのまま用いる場合もあります。しかし、住宅の価値については、多くのケースで、認可決定時を想定した額で行うように求められます。したがって、住宅ローンの返済が進むことにより申立て時と比べてもやや価値が高まることに留意する必要があります。

6.まずは弁護士にご相談を

以上は一般的な話ですが、ご自身の件で悩んでおられる方はまずは弁護士にご相談ください。民事再生は複雑な手続きであり、他にも考慮すべき事項はたくさんあるので、民事再生に詳しい弁護士へのご相談をお勧めします。当事務所では、民事再生を含む債務整理案件を多く扱ってきました。もちろん、持ち家があるケースにおける民事再生も多く扱ってきました。民事再生を希望する方、また考えている方は、まずは当事務所にご相談いただければ、と思います。

ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪をお願いします。

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