浪費が民事再生に与える影響
1, 浪費に関して、破産と民事再生の違い
浪費が原因で支払い不能(事実上の破産状態)に陥ってしまった場合、自己破産と民事再生では、どのような違いがあるでしょうか?
まず、破産の場合は、浪費は免責不許可事由となります(252条1項4号)。すなわち、条文上、免責が不許可になる可能性があるということです。もっとも、実際は裁量免責が認められることが多いです。しかし、免責不許可事由に該当するような浪費があった場合は、管財事件として管財人による免責調査を経て裁判官が判断、ということが一般的で、同時廃止で通る可能性は低くなります。
一方、民事再生の場合、民事再生法174条に規定される再生計画案の不認可事由の中には、浪費について直接に言及した条項はありません。それゆえ、弁護士に依頼する前の浪費を理由として再生計画案が認められないことはない、と解されます。
それゆえ、免責不許可事由があって破産だと免責が認められるか不安だという場合に民事再生を選択するということは、一般的にありうる話で、浪費の場合も不安であれば、民事再生を選択するという方法はあります。ただ、上記の通り、一般的に言えば、浪費があっても、裁量免責が認められるケースが多いですが、もし、心配であれば、自己破産ではなく民事再生を申し立てるという選択肢はあります。
2,再生なら浪費をしていても大丈夫か?
上記の通り、民事再生の場合、浪費は不許可の事由として明記はされていません。では、民事再生をする場合、浪費をしていても大丈夫なのでしょうか?
再生計画案の認可にかかわる問題
まず、弁護士に依頼する前に浪費をしていて、それが原因で借り入れが増大していたとしても、破産の場合と違って浪費による債務であることは不許可の理由として挙げられていません。したがって、民事再生の場合には、債務増大の原因が浪費であったこと自体が再生計画案の認可・不認可の審査において問題とされることはないと言えます。
しかし、だからといって、弁護士に依頼後も浪費を改めないまま、裁判所への民事再生申立に進んだ場合はどうでしょうか? この場合、174条1項2号の「再生計画が遂行される見込みがないとき。」に該当するとして不許可になる恐れはあります。すなわち、民事再生は、再生計画案を裁判所に提出し、それが認可されないと目的を達しえないわけですが、再生計画案の審査において裁判所は返済計画案通りに返済される見込みがないと考えた場合、再生計画案を認可せずに手続きを終わらせることができます。その判断は、家計の状況や履行テストの履行状況等を見て行うわけですが、もし、家計一覧をみて浪費が酷ければ、もし認可をしても返済できなくなってしまうのではないか、という疑問を持たれかねません。浪費が原因で債務が増大したのに弁護士に依頼後や、裁判所に申し立て後まで浪費が続いていて家計が改善されていないとすると、業者への返済が始まっても同様に浪費をしてしまい再生計画案に沿った返済ができなくなってしまうのではないか、という疑問を持たれてしまう恐れがあります。
その場合、裁判所は、認可せずに終わらせるという結論に至る場合もあれば、もう少し様子を見るということで最終段階(小規模個人再生でいえば債権者の同意・不同意についての書面決議終了後)でなかなか認可が下りずに家計一覧の提出を求めつつ様子を見るというようなことになる恐れもあります。通常は書面決議の後(給与所得者等再生だと債権者の意見を聴く手続きの後)はすぐに認可の決定がされるのですが、履行可能性に疑問が生じた場合、裁判所はその段階で判断を保留して検討する、ということもあります。
最悪のパターンは、浪費をしてしまったために履行テストの支払に遅れが出てしまった場合で、この場合は、認可が下りない可能性も高くなります。
したがって、民事再生の場合も、弁護士に相談、依頼後は浪費をしないようにする必要があります。そもそも、再生であれ、破産であれ、生活再建のための手続きなので、弁護士に依頼後や、ましてや裁判所に申し立て後の浪費を避けるべきであるのは、ある意味当然のことだと思います。
では、どのような内容の、どの程度の支出だと履行可能性との関係で問題になりうるか、については、民事再生手続きを依頼している弁護士に個別に相談すると良いでしょう。もちろん、当事務所にご依頼中の方であれば、ご質問いただければ、個別に対応させていただきます。何か特定の支出をする場合、再生計画案の履行可能性との関係で問題になりうるかは、金額だけではなく、家計に与える影響、その支出の必要性、繰り返される恐れがあるか、などいくつかの要素を考える必要があるので、再生手続き中に出費して問題ないか不安がある場合は、ご依頼中の弁護士に確認するのが望ましいと思います。
清算価値への上乗せ(算入)を求められる可能性
また、弁護士に依頼後の浪費について、本来であればその金銭が手元にあったはずだということで清算価値に上乗せすることを求められる場合もあります。そうすると、再生計画案作成時に求められる返済の最低額が増えてしまう恐れがあります。
3, 民事再生は弁護士にご相談を
民事再生(小規模個人再生、給与所得者等再生)は、ぜひ、弁護士にご相談ください。当事務所では、多くの民事再生案件を扱ってきました。そこれまで扱ってきた中には借り入れ原因が生活費や学費などで特に問題がないケースもあれば、浪費やギャンブルなどが原因の場合もあります。また、住宅(持ち家)のある場合もない場合も、また、小規模個人再生の案件も給与所得者等再生の案件も扱ってきました。民事再生は当事務所が得意とする分野の一つですので、再生手続きを検討中の方は、ぜひご相談ください。
ご相談には、まずはお電話か電子メールでのご予約をお願いします。ご予約の上、立川の事務所までご来訪ください。平日は午後9時まで(電話受付は午後7時まで)、日曜日は午後7時までの営業となっております。当事務所では、債務整理(民事再生、任意整理、自己破産、など)や、過払い金については、相談だけなら無料となっております。