民事再生(小規模個人再生)で債権者の異議(不同意意見)が出そうな場合、どうするか?

1, 小規模個人再生とは?

小規模個人再生は、個人向けの民事再生手続きであり、裁判所に申し立てて認めてもらうことで、

  • 住宅ローンを支払い続けることで持ち家を残すことができる(住宅資金特別条項)。
  • 一般の債務を大幅に減らせる(例えば、5分の1。)。ただし、清算価値を下回ることはできない。
  • 減額後の債務を3年ないし5年で返済する。


などの特徴があります。例えば、一般の債務(住宅ローン以外の債務)が500万円の場合、原則として100万円まで減らせる、など状況によっては大きなメリットがあります。
ただ、あくまで一定の条件を満たして、裁判所の認可を得られた場合であり、どういう場合でも使えるというわけではありません。

2, 債権者の異議(不同意意見)とは?

小規模個人再生を行うにあたり、いくつか障壁になりうる事柄がありますが、そのうちの一つは債権者の異議です。すなわち、小規模個人再生では、債権者の半数以上か、債権額の過半数の債権者から異議が出ると廃止(認可されずに終わってしまうこと)となってしまうのです。正確には、以下に記述するように不同意の意見のことなのですが、異議という言い方がされることも多いです。
 すなわち、民事再生法237条1項は、「小規模個人再生においては、第二百三十条第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が、議決権者総数の半数以上となり、又はその議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えた場合にも、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。」とされているのです。小規模個人再生においては、債権者から積極的に賛成の意見を述べてもらう必要はないものの、不同意との意見が出て以上の条件を満たしてしまうと手続きは廃止になってしまい、再生計画案の認可には至らないのです。
実際に、再生計画案への異議(不同意の意見)が出ることはあまり多くはありませんが、一部の債権者は積極的に異議を出すと言われています。

3,  半数以上ないし過半数の異議が出そうな場合、どうするか?

債権者の半数以上、または債権額の過半数の異議(不同意の意見)が出そうな場合、どうすればよいでしょうか?

1 とりあえずそのまま申立ててみる

異議が出るかどうかは実際に申し立ててみないとわかりません。そこで、とりあえず、異議が出ないか、出ても半数以上、または債権額の過半数に達しないことを期待して申立ててみるということもできます。ただ、この方法の欠点は手続きの終盤に至らないと実際に不同意意見(異議)が手続き廃止(不許可)の要件を満たすほど出るかわからないということです。つまり、小規模個人再生は、大まかにいうと、
申立て→開始決定→債権届→債権認否→再生計画案提出→債権者の意見を聞く期間 と進みます。そして、この間、半年程度かかることが多いです。そうすると、異議(不同意意見)が債権者の半数以上または債権額の過半数に達するか、は、手続きの終盤にようやくわかるということになります。そこで異議が出て手続き廃止になると、それまで時間と手間をかけて進めてきたことはとりあえず何ら功を奏しないまま終わってしまう、ということになってしまいます。

2 給与所得者等再生を申立てる

小規模個人再生ではなく給与所得者等再生を申立てるという方法もあります。給与所得者等再生であれば債権者の不同意(異議)により手続きを廃止にする(再生計画案を許可しないで手続きを終わらせる)仕組みがありません。そこで、異議を出しそうな債権者が多い場合には、異議による手続き廃止の危険を避けるため、給与所得者等再生で申立てるという方法があります。
ただ、給与所得者等再生は、

① サラリーマンや公務員など給与所得者であることが前提である
② 収入の変動が大きいと使えない(概ね2割程度が目安と言われている)
③ 可処分所得基準を満たす必要がある

という点に注意が必要です。特に、③可処分所得基準については、可処分所得の2年分を下回ってはいけないとされているため、年収が比較的多い場合には返済額があまり減らないという結果に終わりがちです。すなわち、小規模個人再生では、再生計画案を作成するにあたり、最低弁済額基準と清算価値基準を満たせばよいのですが、給与所得者等再生では可処分所得基準も満たす必要があるため、ある程度収入がある場合、再生計画案を作成する際に可処分所得基準が下限となり、期待したほど減額できないということになりがちです。そこで、給与所得者等再生で申立てることを検討している場合は、実際に申し立てる前に可処分所得の計算が不可欠です。その結果、可処分所得基準では債務額をあまり減らせないという場合には、リスクはあるけれども敢えて小規模個人再生で申立てるという手もあります。小規模個人再生が債権者の異議(不同意)で廃止となっても、その後に改めて給与所得者等再生を申立てることはできます。

4, まとめ

以上のように、小規模個人再生には債権者の異議(不同意意見)で再生計画案が認可されずに終わってしまうリスクがあるという欠点があります。ただ、実際に不同意の意見が出ることは少なく、ほとんどの場合は、認可されます。
もっとも、少数ながら異議(不同意意見)を出すことが多いと言われている債権者もありますので、そういう債権者が債権者数で半数以上、または、債権額で過半数を占めている場合は、あらかじめ他の方法(給与所得者等再生)を採るか、検討が必要でしょう。ただ、給与所得者等再生には上記のように可処分所得次第では期待したほど債務を減額できないという欠点もあり、どちらが良いかはよく検討する必要があります。
この点について迷っておられる場合は、ぜひ、弁護士にご相談ください。当事務所は、2009年の設立以来、債務整理・過払い回収案件を中心に扱っており、小規模個人再生、給与所得者等再生、とも多くの経験があります。民事再生をご検討の方は、まずは、ご相談ください。

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