小規模個人再生における不同意(異議)

1,小規模個人再生における不同意(異議)とは?

小規模個人再生において、債権者の異議が多いと認可されないという話を聞いたことがないでしょうか? これは、条文上、「同意しない」という文言で書かれており(民事再生法230条4項、など)、実務的には「不同意」「不同意意見」「不同意の回答」などと呼ばれています。

すなわち、小規模個人再生では、裁判所が定めた日までに再生計画案を提出する必要があります。再生計画案、というのは、例えば、「債務総額の20%を、3年間で弁済する。毎月月末に支払う。残りは免除してもらう」というような案のことです。実際には他にも様々な記載事項があり、複雑ですが、代理人弁護士が付いているときはもちろん代理人弁護士が作成と提出を行います。再生計画案の提出を受けた裁判所は、法律上の要件が整っていれば、債権者の書面決議に付す決定をします(法230条3項)。書面決議というのは、小規模個人再生の場合、不同意の意見を期限までに裁判所に提出するかどうか、という方法で行われ、特に意見がない(あるいは賛成の)債権者は何も出さないことになります。この内容では認めたくない、と考える債権者だけが不同意の回答を期限内に行うわけです。

ここで、債権者には、住宅ローンの銀行等は含まれません(法201条1項)。住宅ローンを貸している銀行が不同意意見をいうことはできないわけです。

ただし、住宅ローンを貸している銀行がカードローンも貸している場合は、そのカードローンは一般債権なので、カードローンの債権者としては含まれます。

2, 不同意(異議)が出るとどうなるか?

書面決議に対して不同意の意見が出たとしても、必ず不認可となるわけではありません。債権者数で半数以上、または、債権額で過半数の債権者から不同意の意見が出た場合のみ、手続きは廃止となり(法237条1項本文)、再生は許可されずに終わってしまいます。

逆に、それ未満であれば不同意の意見(異議)が出たとしても、結果に影響せず、不同意とした債権者の分も含めて、再生計画案に従って変更される(債権額が減る)ことになります。

3, 不同意(異議)は実際のところ、出るのか?

では、小規模個人再生を申し立てたときに、実際に不同意(異議)は出るのでしょうか? これについては、大半のカード会社や消費者金融、債権回収会社は出さないことが多いです。ただ、一部では不同意意見を出す債権者もあり、また、同じ債権者でもケースによるようです。全体として不同意意見が出てくるケースは少数なので、債権者数が多く債務額も分散している場合は比較的リスクは低いと思います。当事務所の案件でも、裁判所から「債権者〇〇から不同意の意見がありましたが、債権者数の半分、債権額の過半数に達しなかったため、再生計画案は可決されました」という連絡を頂いたことは何度かあります。もちろん、不同意意見が出ないケースも多くあります(そのほうが大部分だと思います)。

一方、特定の債権者が債務額で過半数を占めているような場合は注意が必要です。例えば、債権者が5社あっても、うち1社が債権額では過半数の場合は、その1社が不同意の意見を出せば、再生計画案は可決とならず、手続きは廃止されてしまいます。

また、もともとは数社あっても代位弁済による求償権取得や債権譲渡で集約されている場合も、再生計画案が決議に付される時点での債権者が問題なので、要注意です。例えば、A銀行とBカード、Cクレジットから借りていて債務額が各100万円ずつだった場合、仮にBカードから不同意意見(異議)が出ても問題ないように見えます。しかし、弁護士介入で支払いを止めた後、A銀行の借り入れを保証会社であるBカードが代位弁済したら、今度はBカードが債権者となります。そうすると、Bカードの債権が全体の3分の2を占めることになり、Bカードが不同意の意見を言えば、再生計画案は可決されずに、手続きは廃止されてしまいます。

また、個人債権者については、当然、その方の考え方次第です。従って、知人・友人等から借りていてその方の意見が結論に影響を与えそうな場合は、事前によく意向を聞いておいたほうが良いでしょう。

4,不同意(異議)により再生手続きが廃止になったらどうするか?

半数以上の債権者の不同意、または過半数の債権額の債権者の不同意が出て再生手続きが廃止になってしまったらどうしたらよいでしょうか? まず、再生手続きが廃止となった場合、裁判所は職権で破産手続きの開始決定を出すことができます(法250条1項)。しかし、法人の場合はともかくとして、個人の再生手続き場合、裁判所がそのような形で破産手続きを始めることはほとんどないと思われます。

そこで、上記のように再生計画案の可決を妨げるだけの不同意意見(異議)が出た場合は、通常は、不許可で終わり、改めて債務者の選択にゆだねられることになります。ただ、返済が困難なので再生を申し立てたわけなので、任意整理に切り替えることはほとんどの場合難しいと思います。そうすると、小規模個人再生が不許可に終わった場合は、ほとんどのケースでは、給与所得者等再生か、自己破産、のいずれかが現実的な選択肢となるでしょう。

給与所得者等再生は債権者の不同意(異議)で手続きが廃止になるという仕組みがなく、要件を満たしていれば債権者の意向に関係なく認可されますが、ただ、返済額を決める際に可処分所得基準を満たす必要があるので、ある程度収入が多いと、返済額が大きくなりがちです(扶養している家族の人数等にもよります)。また、給与所得者等(条文では、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」(239条1項)と規定)しか使えないので、自営業者だと原則として使えない、など利用要件に制約があります。

一方、破産手続きだと持ち家などの資産は原則として失うことになる、など、ケースによっては不利益も大きいです。そこで、どの方法が良いかは、メリット、デメリットをよく考えたうえで、決定することが望ましいと言えます。いずれにせよ、いったん小規模個人再生が不許可で終わった場合に、改めて給与所得者再生、あるいは、自己破産を希望する場合は、裁判所に新たな手続きとして申し立てをする必要があります。

また、そもそも、不同意(異議)により認められないまま終わる恐れがあるときは、あらかじめ、小規模個人再生を避けて、給与所得者等再生か自己破産を申し立てるという選択もあります(もちろん、可能であれば任意整理で解決できれば良いでしょう)。不同意意見(異議)が出てくるかどうかの予測は容易ではありませんが、これまで不同意を出す傾向があった一部の消費者金融会社やカード会社等が債権額で過半数を占めている場合、等は要注意だと思います。

5,民事再生については、まずは弁護士にご相談ください

このように、小規模個人再生においては、不同意意見(異議)が債権者数で半数以上、または債権額で過半数、となり許可されずに終わってしまうというリスクも理論上ありますが、一方で、多くの方が民事再生を利用して生活の再建に成功しています。実際のところ、不同意の意見(異議)が出ないことの方が多く、また、一部の債権者から出ても半数以上に達することは稀です。ただ、一社だけで債権額が過半数に達する場合でその業者が過去の案件で不同意を出していることで知られているような場合には、要注意だと思います。

 案件によっては、上記のような要注意の事項はあるものの、民事再生は状況によっては大幅に債務を減らすことができ、持ち家も残せるので、効果が大きな方法であると言えます。そこで、ご自身のケースが民事再生に向いているのか、小規模個人再生、給与所得者等再生、いずれが良いのか、ぜひ、弁護士にご相談いただければ、と思います。

小規模個人再生における不同意意見(異議)のリスクや給与所得者等再生とどちらを選ぶのが望ましいかもケースにより異なりますので、まずはご相談ください。

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